のどかな漁港に突如として現れた牛深ハイヤ大橋は、関西国際空港を手掛けた、イタリアの建築家レンゾ・ピアノ氏の設計によって平成9年8月に完成。全長883mと県内最長を誇り、車道と両側歩道を合わせた幅員16mという巨大さをまったく感じさせない繊細さとしとやかさは、自然景観と調和した世界に類をみない美しい橋。
新熊本100景にも選ばれ、牛深ハイヤ大橋をとりまくうしぶか海彩館とともに牛深観光のメインスポットとなっている。
カッコよすぎでは??
デザイン、美しい海、橋の途中しかも海上に設けられた交差点の珍しさ、ループ橋、最高のロケーション・・・好きな要素が盛り沢山の牛深ハイヤ大橋をこの目で見てみたい!
そんなきっかけの旅の記録。
【八代市】旅の始まり
博多から新幹線さくらに乗車して約50分で新八代駅へ到着。時刻は9時頃。ちょっと寝坊して始発を逃したけど、まだ慌てる時間じゃない。
輪行を解除して早速出発・・・の前に、新八代駅の新幹線ホームへ特急リレーつばめが乗り入れていた時代の名残を見に行くことにしました。
九州新幹線は今でこそ博多から鹿児島中央まで直通運転されてますが、2004年3月に新八代〜鹿児島中央までの部分開業から2011年3月の全線開通まで、博多〜新八代は在来線特急のリレーつばめが運転されており、新幹線と同じホームで乗換が容易に行えていたという。
新八代駅から少し北の踏切にて。向かって左手(北側)の奥にポイントが設けられており、鹿児島本線の上下線とは別に分岐している線路が見て取れる。
新幹線と同じホームへ発着させることで、スムーズに乗換が出来たというワケですね。
もちろん現在の新八代駅では在来線と新幹線を同一のホームで乗り換えることは出来なくなりましたが、2022年9月23日に開業する西九州新幹線の先行区間である武雄温泉駅で同じ形態が取られるとのこと。ちなみに特急の名称が「リレーかもめ」というあたりも共通だったりします(厳密に言えば、特急みどり・ハウステンボスも運行されますが)。今日現在は特急かもめに乗れば乗換不要で長崎へ行けて便利ですが、開業した際はリレーかもめと新幹線かもめを乗り継いで長崎へ行ってみようと思います。
新八代駅は通過したことがあっても乗降車は初めてだったので、遺構というには早いかもですがちょっとした鉄道の変遷を見ることも私の旅の楽しみのひとつだったりします。
さて、新八代駅付近は気が済むまでぶらぶらしたので、ちゃんとした自転車旅を始めます。
新八代駅から南下し、球磨川と古くからの温泉街の日奈久温泉を過ぎると、海が見えて素晴らしい雰囲気に。ただし国道3号線は交通量が多くトンネルもあり、自転車で走るにはややストレスなので、海側の県道へ逸れるルートを取ることにしました。
踏切を渡った先には海があり、いい感じに列車を撮れそうな気がしたので時刻表を調べ始めた途端に踏切が鳴り出した。すると貨物列車が向かってきたので、とりあえずシャッターを切ってみたけど微妙。でも貨物列車を狙ってたワケではないから問題なし。
しばらくすると、肥薩おれんじ鉄道の車両がやってきました。1両のおかげで上手く海や空も一緒に収まり、狙い通りに撮れて満足。くまモンのラッピングも施されてて可愛いかよ。
県道と書かれなければ県道として認知できないし、それでもやっぱり県道に見えない問題。とりあえず今回のところは信じて進むことにします。
それにしても、あんな路面のペイントを見ると県道ではなく"険道"かと疑心暗鬼になってしまったけど、進んでみると至って穏やかな海沿いの平坦路で拍子抜け。もちろん険しいことを期待しているワケではありませんが、無事に険しくなりました。
【芦北町】放課後ていぼう日誌 聖地巡礼
沿岸部のアップダウンが落ち着くと、御立岬公園という開けた場所に出た。
展望台に登ってみると思った以上にいい景色。桜の見頃に訪れるとより素晴らしそうです。
そして芦北町へ。実際のところは御立岬公園も芦北町だったけど、カントリーサインや標識を見逃してたっぽい。
また、芦北町は「放課後ていぼう日誌」の聖地だったりもします。放送当時から大まかな場所は把握してましたが、こんな場所に行くこと無いな〜と思ってたところ、牛深ハイヤ大橋に向かう途中で立寄るには丁度いいかもしれない、と思って訪れた次第です。
そんなワケで早速3話目、マゴチ回の舞台となった亀ヶ浜海水浴場もとい、鶴ヶ浜海水浴場へ。
なるほどわからん。
雰囲気がよく歩行者もいない場合は歩道の走行も辞さないスタンス。まったりと引続き道なりに進みます。なお、この場所も作品を見返すとOPで一瞬描かれてる場所でした。
この堤防は1話目、部長と陽渚が出会った場所かな・・・となると部室もこの辺りかと思いながら少し進み、来た道を振り返ってみたのが上の写真。作中と様子が少し異なるけど、もしかしてと思って引き返してみる。
ここだあああああ!
あまり下調べせずに訪れた聖地のなかでも”わからないけどわかる”発見をしたときはテンションが上りますね。今回は主要スポットの部室だからひときわ感激してしまうものです。
高さが控えめの斜張橋はOPや作中で何度も見かけることになる芦北大橋。
うーん、既視感がありすぎる。初めて来たのに初めて来た気がしない感覚も、聖地巡礼する時の得も言われぬ体験のひとつと思ってます。楽しい!
それにしても芦北の海は美しくて癒やされる。作中で描かれる海の青さは誇張でもなんでもなくて、釣りのアクティビティや漁業が盛んになる理由をなんとなく理解できるというもの。
七海オレンジロードと呼ばれる農道を走って芦北町を後にしました。
【水俣市】公害病の知見を深める
次に訪れることになるのは水俣市。かつての町の玄関口と思われる水俣駅に立寄ってみましたが、少し寂しい駅前だったことは否めません。現在は新水俣駅が実質的な玄関口とはいえ、水俣駅前の国道3号線はお店が並んでおり、市街地の中心であることは変わってないことも感じられます。
そして水俣市といえば社会で必ず勉強することになる公害病、水俣病が発生した場所として認知している人も多いのではないだろうか。私自身も詳しいワケではないので詳細はググってください。
水俣駅の目の前、国道3号線を挟んだ場所にチッソ水俣工場の出入口が見える。ただし、出入口には当時の様子を思わせる物は特に無いので少し場所を移します。
やってきたのはチッソ水俣工場の出入口からほど近い百間排水溝。1932年から1968年まで、まさにこの場所から水俣病をもたらしたメチル水銀化合物が水俣湾に排出されたとのこと。もっとも、根本的な原因は排水を未処理のまま廃棄したことですが。
農林水産省が公開している情報のなかに「耐容一週間摂取量」という、人が一生にわたって摂取し続けても健康影響が現れない1週間あたりの摂取量という指標には、総水銀4マイクログラム/kg、うちメチル水銀1.6マイクログラム/kgとある。これらを鑑みると、排出された水銀量の70〜150トンあるいはそれ以上が、いかに凄まじい汚染だったのか想像を絶する。
また、水俣市立水俣病資料館にもできれば立寄りたかったところだけど、ちょっと時間が無かったために今回は見送りました。再び水俣市に来るときは、ここに立寄ることを前提にスケジュールを組むことにしたいと思います。
【鹿児島県】出水市・阿久根市・長島
ついにと言うべきかようやくと言うべきか、鹿児島県へ入った。出水市に来たらば訪れたいと思っていた出水市ツル観察センターは渡来するシーズンでもないので今回はスルー。そもそも時間に余裕もあまり無いですしね。
出水市から向かい風に吹かれながら延々と続く直線路を10km少々走って阿久根市に入る。ちょっと自転車で旅をすることがある私でも根はファッションサイクリストなので、行く先の道の景色に変化が無く平坦なのにスピードが乗らないシチュエーションは少し堪える。豆腐メンタルですし。
黒之瀬戸大橋を経て長島へ渡る。
長島については、フォロワーのブルベ勢が口を揃えてキツい・ツラいと言っていた前知識しかなかったので、どんな過酷な道なのかとビビってたけど、景色は良くてアップダウンも節度があるし、普通にいい道じゃないか。長崎県の限度を超えた険しい沿岸部に比べればなんともないぜー!
ちょっと写真を撮りながら走る自転車クラスタならわかってもらえるかもですが、本当につらい時は写真を撮ることが無くなります。
わかりますか。わかりますよね。
この時は当然そんなことは無く、景色がいい場所で止まっては写真を撮り、コンビニで適宜休憩を挟む時間的余裕もありました。
水俣を発った頃には乗りたい時間帯のフェリーまで時間があまり無いと思ってたけど、計画通りに着くことができて一安心。やはりファッションサイクリストでも多少の走力は必要があることを再確認できました。
乗船券を購入して待つこと3分でフェリーが着岸。鹿児島に滞在した時間はわずかでしたが通過点だったから仕方ない、あらためて来ることにします。
ちなみに運賃は人間が500円、自転車が280円で合計780円でした。
長島と天草市を結ぶフェリーの乗船時間は30分ほど。
海風が気持ちいいー!と言っていたのも出向して5分くらい。4月上旬の海風は浴びすぎると少し肌寒く、大人しく船内に退避しました。遠ざかる長島、右手を通過する戸島、そして正面に迫る天草下島。大海原を航行するワケではないので、景色は変化に富んで楽しめます。
【天草市】牛深ハイヤ大橋
下船即カントリーサインのお出迎え。熊本県天草市へ上陸です。
そして牛深ハイヤ大橋と対面!橋としての機能だけではなく、唯一無二のデザインも文句なしのカッコよさ。シュッとした構造の橋は過度に浮くことも無く、町や自然と上手く馴染んでるような気がします。トラス橋や吊橋だとゴテゴテ感が出てしまいますし(だがあれはあれでイイ)
雰囲気がよさげな展望台に向かうと、イケメンな先客がいたので無断で撮らせてもらう。普段は鳥を撮らないので、図らずもEOS R6の鳥瞳AF検出機能の高性能っぷりを知ることになりました。
今日もTCRがカッコいい。もちろん牛深ハイヤ大橋も。
見晴らしがよく映える展望台まで設けてもらって、天草市や熊本県には感謝しかないですね。
さて、日没も迫っているので明るいうちに牛深ハイヤ大橋周辺をサクッと走り回ることにします。
緩やかにカーブする橋の途中に設けられた交差点と信号機。あらかじめ知っていても実際に目の当たりにすると感動もひとしおですね・・・。
いったん下須島へ上陸した後は、旧道のアーチ橋を渡って再び牛深ハイヤ大橋へ。
アーチ橋側から牛深港方へ、来た道を戻ります。堪能したー!
そして今日のところは目的を達成できたので、ようやく宿を探すことにしたのですが、新コロの影響か3軒目の問合せでなんとか宿泊先を確保できました。島の端っこという土地柄、宿の選択肢が多くないので、よい子はあらかじめ宿泊先を確保したうえで訪れるのがベターかもしれません。
それにしても天草市街か熊本市街まで、最長120kmの限界ライドを強いらそうで少し焦った。風光明媚な場所を夜通し走るほど虚無な事は無いですからね。
宿泊先にチェックイン後、シャワーを浴びて外を眺めるとマジックアワーが美しかったので、再び牛深ハイヤ大橋の袂へ。フラップ内側に光源を仕込んで反射させるライトアップのセンスも高くてカッコいい(この記事だけでも5回くらい言ってる)
そしてEOS R6の手ブレ補正能力が凄まじい。シャッタースピード1/4秒という遅さなのに三脚が無くても撮ることができてしまいます。もちろん高感度耐性も素晴らしくて、ISO6400でもノイズは目立たず十分実用に耐えられます。
こうして旅の1日目を終えました。最大の目的である牛深ハイヤ大橋は昼の姿も、夜のライトアップされた姿も見ることができて最高でしたね。
道中も見どころが多く、退屈することなんてまったくなかった。そもそも楽しさや見どころは自分でみつけるものでもありますが。寝坊を除けば我ながら良い旅程だったと思います。
明日も楽しみだ。
2日目へ続く。
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